マトリクス・SDという会社
10周年・・・つづき
10年経ったらやりたいと思っていたことに、「新卒の採用」がある。以前会社組織を活性化するには三つの方法があると学んだ。
「人事異動」・「社員教育」そして「採用」である。わが社も十周年を迎えて、組織も少し硬直してきたように思う。また、平均年齢も上がって、当たり前のことだが皆10年分年をとった。今後の10年、更なる高みを目指すには、原動力となる若い力が必要だ。
基本的に今年から中途採用はしないこと、毎年新卒採用をやることを社員に発表した。ついては整備、検証しなければならないことが山ほどあった。新卒採用に向けてプロジェクトをつくり、分野ごとにそれは彼らに任せた。でも、そうはいっても本当にいいのかという疑問もあった。
新卒者というのは卵から孵ったばかり。殻を割って出てきた人たちの最初の会社がウチでいいのか?その人生に責任がもてるのかという自問。
正直、自信は揺らいだ。そのときに、採用コンサルタントの会社の方が「そういう気持ちをもっている経営者、会社こそ新卒採用をやるべきでは・・・」といってもらったことで、ある種の覚悟ができたといっていい。
現在のリクルーティングは私の想像を超えた未知の仕組みだった。求職者の大学生に対しては、全てWEB上でのアプローチとなる。HPも全面作り変え、リクルーター用のサイトやブログも追加した。大学生が読んでも面白い入社案内も作成した。
就活ナビにも掲載し、エキスポにも二度参加した。三回の会社説明会、五段階の面接も実施した。正直、金も時間も費やしてのぶっつけ本番だった。失敗してもいい、今後に活かせれば、と無理やり自分に言い聞かせた。
しかし、結論から言えば、成功したと思う。成功したというにはいくつかの理由があるが、まず応募してくれた学生達との出会いに尽きる。派遣業に対する逆風が吹き始めている時期にあえて選んでくれた人たちに出会えたことが嬉しかった。いろんな人にたくさん会った。採用活動についてはほぼ未経験といっていい。プロジェクトチームの面々は研修をうけることでリクルーターとして驚くほど成長した。
更に不思議なことにそのリクルーター8名が各々に仕事に熱が入ってきた。仕事にノってきた。不況の中、社の業績も群を抜いて上がっていった。
一次・二次・三次と選考し、さらにまたその中から人選していかなけばならないということを経験することで、大なり小なりその人達の人生に影響を与えるという責任が、すでにもたらされているという事を思い知ったのだろう。
プロジェクトのひとりの女子社員が朝礼で言ったことも印象的だった。 「採用活動の中で、私たちはこの会社の魅力をたくさん話しました。その話を聞いて彼らは応募してくれ、そのなかで選ばれた方達が来年の4月、本当にこの会社に、私達の会社に入って来ます。その時、あの話はウソだったのか?と感じさせないように、私達の真剣な仕事ぶりを見せなければなりません。そのためにもう一度、皆で日々検証しましょう。」と。
この採用活動はやって良かったとしみじみ感じた瞬間でもあった。
「卒啄同時(そったくどうじ)」という言葉がある。卵のなかからヒナが殻を破って生まれ出ようとする瞬間、内側からヒナが殻をつつくのを「卒」、外から親鳥がつつくのを「啄」という。この自然な不思議さを表現した言葉が「卒啄同時」だとか。この時ヒナとは、実は新卒者ではなく、10年目の会社に今いる社員たちではないかとも思った。
殻を破りたいと内からつつき、外からつつく「啄」は「社長である私が決めた新卒を採用しよう」ということになるのか?とにかくいろんな気づきや、チャンスを与えてくれた彼ら、選考から残念ながら選ばれなかった学生達も含めて、機会があれば、本当に許されるならもう一度みんなに会いたいと切に願う。
萬謝!
< 前へ
カテゴリ一覧へ